誓いの詩
逃げ出そうと思ったことは無かった。
そこに不満など無かったし、そこに居る事は当然だった。
でも、俺は今、そこに、聖地にはいない。
あの人の詩を読んだ瞬間、駆けた衝動。
その衝動のままに、俺はそこから出た。
今頃、きっと騒ぎになってるだろうと思う。
それでも、罪悪感を感じる事はあっても、戻ろうという気はなかった。
「セイランさん!!」
「ランディ・・・様?」
ようやく見つけたあの人に、俺は駆け寄る。
俺の感覚では別れたのはついこの間で。
なのに、セイランさんと俺の間には確実に時の差が生まれていた。
最後にあったときよりも、セイランさんは大人びてる。
「どう、して。」
珍しく動揺するセイランさんに、俺は抱きついた。
言葉がもどかしくて、久しぶりにキスをする。
全てを伝えようと、噛み付くように。
セイランさんもソレに応えてくれる。
懐かしい、セイランさんの温度。
「・・・中に入りましょうか。」
長い間キスをして、セイランさんの言葉に導かれて。
俺はセイランさんの家に足を踏み入れた。
そして次の瞬間、後ろから抱きしめられた。
セイランさんの体温を背中から感じる。
ずるい、と思って腕を解いて、もう一度自分から抱きついた。
再会して2度目のキスはセイランさんから。
「ん・・・。」
キスを甘受して、唇を開き、セイランさんの舌を招き入れる。
微かな湿った水音とともに入ってきたセイランさんの舌に、
自ら舌を絡ませた。
「ン・・・ぅ・・・。」
主導権はすぐに握り返される。
それが悔しくてするりと絡まる舌から逃げると、
セイランさんの舌が俺の舌を追ってきた。
そんな遊びを繰り返す。
そのうちに本能が目覚めていく。
会いたかったと、そんな言葉を囁く暇も無く、
セイランさんの手が俺のシャツをめくる。
珍しく性急なその態度に、そして久しぶりのセイランさんの体温に、
無意識に体が震えた。
「ア・・・ッ・・・。」
少し冷たい室温と、見た目に反したセイランさんの熱い手と。
胸を弄られて、それだけで欲望に火がついた。
俺のイイところを知り尽くしてるのに、セイランさんはそこは触らない。
ワザとギリギリを滑る手にもどかしさを感じてセイランさんを見上げると、
少しセイランさんは笑った。
そして、そのまま押し倒された。
「セイラン・・・さん?」
「ベッドまで運ぶ余裕はないですよ?」
「あ・・・ッん」
まさかこの場所でそのままするとは思ってなくて慌てた俺に、
セイランさんは綺麗に笑って、俺の胸にある飾りへ触れた。
それだけで場所の事などどうでもよくなる。
思わず抱きついた俺にセイランさんが笑ったのが顔を見ないでも分かった。
それでも、その顔を見たくて絡めた腕を解いて、セイランさんを見上げる。
セイランさんはやっぱり綺麗に笑っていた。
他の人に見せる仮面のような、氷のような笑みじゃない。
そこに入った微かな温かさは、きっと見間違いなんかじゃないから。
そして、その笑みはきっと俺だけに見せてくれるものだ。
ソレが嬉しくて。
これからも俺だけのもので居て欲しくて。
俺は下から少し体を起き上がらせると、
セイランさんの白い首に所有印を刻んだ。
赤い花びらの刻印が、鮮やかにセイランさんに咲く。
「・・・ッ。」
不意をうったからか、セイランさんは微かに息を呑んだ。
そして、お返しとばかりに俺の首筋に吸い付く。
ピリっと痛みと、それから快感が走って、
セイランさんと同じ場所に印が刻まれた。
「おかえしです。」
すまして言ったセイランさんに思わず笑うと、
セイランさんもつられるように笑った。
そして二人同時に笑みを納めると、キスをした。
深い、深い、キスを。
もう二度とはなれないと、心の中で誓いながらのキスに俺は呑まれる。
それでもキスをやめない。
息が上がって苦しくなるまで俺たちはキスをしつづけた。
「ン・・・ァ・・・ッ・・・ん。」
水音と漏れた声。
目を瞑ったまま、セイランさんを全身で感じる。
「あ・・・ャ・・・。」
キスをしたまま、セイランさんは俺の下衣を下着ごと奪った。
もどかしいように、熱を持った俺に自身に愛撫する。
「ァ・・・ん・・・ゃ・・・ッ。」
怖いほどの快感に逃れようとした俺の腰をセイランさんは掴む。
それから、俺自身を愛撫しながら蕾へと指を這わせた。
まだ入れられたわけでもないのに、その感覚だけで背筋が震えた。
「会いたかった、ランディ様。」
「はぁ・・・ァ・・・ん。」
「もう一度会えるとは思ってなかった。」
切実な告白をして。
セイランさんは俺の中へ指を入れた。
セイランさんがどんな顔をしてるか見たかったのに、
その行為に俺は思わず目を瞑ってしまった。
セイランさんの指が中を轟く。
その動きと、セイランさんの指を形をリアルに感じて。
でも、どこか、世界が曖昧で。
「セイランさん・・・もう、いいから。」
「ランディ、様?でも・・・。」
「セイラン。」
現実に引き戻して欲しくて。
セイランさんをありのまま感じたくて。
名を呼んだ俺に、セイランさんは指を引き抜き、
俺自身に施していた愛撫を止める。
そして、代わりに腰を掴んだ。
「ふ・・・ァ・・・ハ・・・ッ。」
「愛してます。」
さすがに、苦しかった。
それでも、それさえもこの行為が現実だとしらしめているようで、愛しい。
衝動のまま、首筋に抱きついた。
セイランさんが俺の中に入りきる。
それから、背中に腕が回された。
「好きだよ、ランディ。」
「俺・・・も、あい、して・・・セ・・・ラン。」
直後に始まる、激しい抽送。
その余裕の無さに笑えるほど、俺も余裕はなくて。
ただ、セイランさんを逃さないようにとしっかり抱きついて。
「あ・・・ァ・・・ん・・・は・・・ッ・・・、セイ・・・ラ・・・ンッ。」
「愛してる、ランディ。」
「俺・・・も・・・っ。アァ・・・ッ。」
「・・・ッ。」
愛してるというセイランさんの声を、しっかり耳に焼き付けて。
次の瞬間、俺は俺を解放した。
そして。
俺の中にセイランさんが解放したのを感じてから、意識を手放した。
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君が惑うと言うのなら
何度でもこのうたをうたおう
君に送る誓いのうたを
と言う訳で、ようやくの更新です。
そして、一応『紫陽花の詩』の続き設定で。
あ〜、なんだろう、マンネリ化してる気がします。(死)
まぁ、でも、その辺りはスルーで。(ぉ)
こういうのってスランプっていうんですかね?
書きたい気持ちはあるんですけど。(苦笑)
(2004.10.20)
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