風の吹く日



風が吹いていた・・・



「もう行くの?」

菫色の瞳の青年が言った。緑の守護聖マルセルである。

女性に間違われる事の有る美貌は出会った頃から変わっていない。

少女のようなと形容された幼さは今はもう残っては居ないが・・・。

「あぁ・・・。」

ランディが答える。青い蒼い、空の瞳を持った風の守護聖だ。

その答えを聞いて、マルセルの瞳が揺れる。

(分かっていた事なのに・・・。)

新たな風の守護聖が聖地に招かれたあの日、別れが近い事を知ったのだから・・・。

(いや・・・。)

出会った日に、彼が緑の守護聖として聖地に招かれた日に思いを馳せる。

そう、この日が来る事は、あの時から分かっていた事だ・・・。

(でも、同じくらいこの日が来なければって思ったんだ・・・。)

「泣くなよ、マルセル・・・。」

ランディの困った声を聞いて、マルセルは初めて、自分が泣いている事に気付いた。

慌てて涙を拭うが、涙は次から次へとこぼれていく・・・。

「あれ・・・。おかしいな。笑って見送ろうと思ったのに・・・。」

涙を流しながらも無理やりマルセルが微笑む。

その涙を、ランディが唇で拭った。

ランディの唇が徐々に移動し、マルセルの唇を塞ぐ。

やがて、どちらからともなく、抱きしめあった・・・。

長いような、短いような時・・・。

唇が離れた時、二人の頬は涙で濡れていた・・・。

「マルセル、俺さ・・・。守護聖になった事・・・後悔してないよ。」

微笑みながらランディが言う。

「だって、マルセルに会えたんだもんな。」

青と紫の視線が交わる。

「でも・・・出来るなら、守護聖としてじゃなく会いたかったよ。」

小さな呟き・・・。それは、マルセルの思いと一緒だった・・・。

「もう行くよ。これ以上居ると、別れられなくなってしまうから。」

ことさら明るく、ランディが言う。ランディらしいとマルセルは思った。

「それじゃ・・・。」

まるでなんでもない事のように去っていくランディをマルセルは笑顔で見送った。

ランディが自分を思い出すとき、思い出の中の自分が笑顔であるように・・・。

風が・・・マルセルの髪を撫でて行った・・・。






風のごとく君は去ってゆく。
爽やかに、振り返ることなく。
ならば僕は、風に揺れる木々のように歌おう。
君がいつでも僕とこの歌を思い出せるように。


きゃ〜、初めての♂×♂ですよ〜〜。
いやまぁ、騒ぐほどのものじゃないですけどね・・・。(苦笑)
キスまでだし・・・。
この場合、ラン様が攻めでしょうね、やっぱり。(爆)
なんとなく思いついた話です。
守護聖には付き物の別れ・・・。
他の方同士でも書きたいなぁ・・・とか・・・。
再び合える事を信じて・・・。
いつか続きor別バージョンを書きたいなぁ・・・。(ムリだろう)