幸せなユメ



幼い頃、夢があった。
なんてことはない、子供の夢。
ただ、何かになりたいよかいう夢よりはずっと大人びた夢。

ベッドに横たわりながら、ランディは昔を思い出していた。
夢・・・遠い、今まで忘れていたような夢。

愛する人が欲しい。
愛する人と、幸せな家庭を築きたい。

夢は、仲のよい父母を見ていたから生まれたのかもしれない。
夢は、それでいて幸せで不幸だった父母を見ていたから生まれたのだろう。

両親は幸せだった。
父は強く、母は優しかった。
二人はいつも愛し合っていて、お互いがいればそれで幸せだとそんな人たちだった。
ランディをよく愛してくれて、皆でよく出かけたりした。
笑顔は絶えなかった。

けれど、両親は不幸だった。
母はよく父の親戚から嫌味を言われていた。
その度一人泣く母は不幸だった。
その母を目にして、声さえかけれずにただ見守るしか出来ない父も不幸だった。

両親は、幸せで不幸だった。

だから。

ランディは望んだ。

両親のように、真に愛せる相手が欲しい。
そして自分なら、その相手を幸せの中に留めよう。
全ての不幸から守って見せよう。

(俺って馬鹿だな・・・。)

今ならそう思う。
両親は不幸じゃなかった。
お互いがお互いを支えて。
それだけで、幸せだと感じられる人達だった。
問題はあったがそれは不幸じゃない。

不幸で幸せという幼い頃の思いは、きっと間違いだった。
あの人たちは、とても幸せな人だ。

(だって、今、俺は幸せ。)

そっと傍らに眠るゼフェルを見る。
同じ男で、守護聖で。
性格だってまったく違って。

端から見ればきっと不幸。
それでもランディは幸せなのだ。

「ん・・・ランディ?」
「あ、ゴメン・・・起こしたかい?」
「ん・・・別にいい。それより、もう一度寝るだろ?」

こいよ、とゼフェルが傍らを空けてくれることさえ、幸せに感じる。
そしてランディはその言葉に誘われるように、ゼフェルの隣に横たわった。
そして考えた。
どうして今さらそんな夢を思い出したのだろう?

「ほら、寝るぞ。」

考え込もうとしたランディの体にゼフェルの腕が回る。
ゼフェルの体温を感じられることさえ幸せに感じる。

(あぁ、そうか。)

そこで、わかった。
何故夢を思い出したのか。
それは・・・。

(俺が今、幸せに近い所に居るからだ。)

辿り着いた答えに満足して。
ランディは瞳を閉じた。
幸せな夢の傍らで。






幸せの傍ら、瞳を閉じよう
これから見る夢はきっといい夢
貴方との幸せの夢
だから何も恐れる事はない
幸せの傍ら、瞳を閉じよう



幸せのカタチ・幸せのアリカに続く幸せシリーズ。(笑)
いえ、最初は続きにするつもりはなかったのですが・・・。
書いているうちに、というか途中で気付きました。
・・・前にやったよね、このネタ。(爆)
というわけで、幸せのアリカの続きってことにしました。(ぇ)


(2005.8.19)