誘い



侍従の香があたりを包んでいる。

それが、私の香なのか、それともあの人の香なのかはすでに解らなくなっていた。

「おいで、鷹通。」

あの人が少し掠れた声で囁く。

一体、幾人の女性を、あの人はその声で従わせてきたのだろう?

けれど、その声に逆らえなくて・・・。

私は、そろそろと緩慢な動きで、少将殿の近くまで伺候した。

私の姿は、すでに衣一枚で。

友雅殿は、多少懐が乱れてはいても、単を纏っていた。

近づいてまじまじと見られながら、今さらながらにその現実に気付いて私は紅くなる。

「今さらだろう?」

思っていた事をサラリと言われ、私はますます紅くなる。

その言葉に含まれる事は・・・。

つまりそう言うことだった。

私と友雅殿は恋人同士で。

つい先ほどまでも、二人で戯れていた。

「まぁ、そんな君も可愛くて好きだけどね。」

独り言のように呟いて、友雅殿が、私に手招きする。

その手がどこへ自分を誘おうかとしている事に気付いて、私は焦った。

「まさか・・・膝に乗れと仰るのですか!?」

「そうだよ。」

こともなげに肯定した友雅殿の声は、けれど、躊躇いがなかった。

「来るんだ、鷹通。」

言葉は少し強いもの。

けれど、声は優しい。

私が逆らえない事を知っているのだ。

ふぅ・・・と一つ小さく溜め息をついて、私は、覚悟を決めて、友雅殿の膝の上に乗った。

友雅殿が嬉しそうに笑うのが見えて、私は思わず見とれてしまった。

その友雅殿の整った顔が、ゆっくりと近づいてきて。

やがて、私の唇に友雅殿の唇が触れた。

「・・・っ。」

まるで、恋焦がれる想いが伝わってきそうな口付けで。

呼吸さえ奪われるような、そんな、苦しくも甘い口付けだった。

友雅殿から与えられるその口付けは、いつもより長く、深い気がした。

まるで・・・私の魂さえも奪い去ろうというように・・・。

「友雅殿・・・。」

そんな、いつもと違う様子に不安になり、名前を呼ぶ。

口付けが不意に止み、友雅殿が苦笑するのが見て取れた。

止んだ深い口付け。

私は肩で息をしていて。

けれど、友雅殿は、呼吸一つ乱していない。

その事が、少し悔しく感じられる。

「鷹通・・・『殿』はいらない。」

そう言って、愛しそうに私の頬や髪をなでた。

その手が不意に私の素肌に触れた。

「友雅っ・・・。」

要望通りに名を呼ぶと、友雅が再び嬉しそうに笑うのが見えた。

本当に、友雅は些細な事で喜ぶ。

子供のような人。

誰よりも大人で、誰よりも子供な・・・。

そう思うと愛しさが湧いてきて・・・。

私は、今度は自分から唇を重ねた。

友雅が一瞬驚いた顔をしたが、それでも、答えてくれる。

私は、すこし躊躇いがちに頭に腕を回した。

「鷹通・・・。」

器用な指先が、私の胸の飾りを弄ぶ。

唇が頬や耳を撫で、首筋へと移動してゆく・・・。

「・・・っ、友雅っ。」

全身が紅潮するのが手を取るようにわかった。

それでも、どうする術もない。

「ん・・・。」

友雅の唇が、首や肩を愛撫する。

そうしている間にも、たった一枚の衣を、友雅が脱がされる。

「・・・っ、ぁ。」

器用な手に、今度は自身を掴まれて小さく声が洩れる。

小さな声は、けれど、友雅には聞こえたようだ。

友雅が笑みを洩らし、ギュッと自身を握る。

「や・・ぁ・・・。」

抗議とも、喘ぎとも取れない声が響く。

もう一方の手が、最奥の窪みを突く。

「んっ・・・ぁ・・・。」

自身が熱を持つのが分かる。

友雅の送り込む刺激が、そのまま、快感へと繋がっていく。

「ふ・・・ぁ・・・。」

不意に、するりと最奥に指を入れられて、声が洩れる。

「先に一度、いくかい?」

思いやってか、意地悪か。

恐らく両方を含んだその言葉に、私は必死に首を横に振る。

そうかい、と呟いて、友雅が愛撫を再会する。

指が2本へ増やされる。

もちろん、それは繋がる為で。

「おいで。」

その言葉に、けれど、私は従った。

すでに、思考が麻痺しはじめていた。

私は、友雅の望むとおりに腰をおろした。

「や・・・ぁ・・・っ・・・。」

徐々に埋め込まれていく友雅自身に、声が洩れるのを止められなかった。

「ほら、全部入ったよ。」

「友雅っ・・・!」

丁寧にも教えてくれた友雅に、真っ赤になりながら私は抗議した。

くすくすと笑みを洩らして、友雅がゆっくり動き出す。

「本当は・・・自分で動いて欲しかったけどね。」

それはまた今度・・・と不吉な事を呟きながら、動きは激しくなる。

「っ・・・ぁ・・・。」

声が引っ切り無しに洩れて・・・。

絶頂が近いのが手を取るように分かった。

偶然のように、けれど、わざと感じる場所を突くと友雅。

「ぁ・・・ん・・・。」

けれど、友雅は、その寸前で別の場所を突く。

それを何度も繰り返されて。

次第に、何も考えられなくなる。

「友雅ぁ・・・。」

やがて、繰り返される快感に狂いそうになって。

私は求めるように名前を呼ぶ。

その語尾は、甘く掠れてしまう。

しょうがないな・・・と友雅が苦笑するのがわかった。

急激に、動きが激しくなる。

「ぁ・・・ん・・・っ・・・。」

「いいかい、鷹通?」

少しだけ乱れた呼吸で友雅が聞いてくる。

こくこくと、首を縦に振って、返事をする。

「ぁ・・・っ・・・。友雅ぁ・・・もう・・・っ・・・。」

上り詰めようとしているのを友雅に訴える。

「いっしょにいこう、鷹通。」

「ゃ・・・ぁ・・・っ・・・。」

友雅が、中で自身を解放するのがわかって。

私も精を放った。






テーマは騎乗位。(爆)
初の裏遥かにして、初の友雅×鷹通v
2キャラは結構見境なく好きだけど、1キャラは・・・。
そんなこんなで、1で書けそうなCPは友雅×鷹通と頼久×天真かな・・・とか。
タイトルは『さそい』ではなく『いざない』と呼んで下さい〜v