幸せのアリカ


「俺も幸せだよ」

そういって笑うと、ゼフェルも笑った。
それから優しいキスをくれる。

嬉しくて、俺は自分からキスを深くした。

ピチャ

濡れた音がして、顔が赤くなる。
俺、何てことしたんだろうって今更気づいて、顔を離そうとした。

「・・・っん。」

だけど、唇が離れることは無かった。
ゼフェルの右手が俺の頭を抑える。
主導権を握り返したゼフェルの舌が、歯列を辿った。

魂を抜かれそうなキスってよく言うけど、そういうキスって本当にあると思う。
ゼフェルはまさにそんなキスを俺にして、俺の頭は本当に魂を抜かれたようにボンヤリしてくる。
体からも力が抜けていく。

立っていられなくなって、俺は思わずゼフェルにしがみついた。

「ずいぶん積極的じゃねーか。」

笑いながら言ったゼフェルを睨む。
でも、ゼフェルはそんなこと気にしないかのように俺の耳に唇を寄せた。

「ベッド、行くか?」

そういって耳を舐められる。
濡れた音がさっきより大きく聞こえた。
それに呼応して体が震えた。

うなずく代わりにギュッとゼフェルにしがみつくと、俺の体はふわりと宙に浮いた。
そのままゼフェルに運ばれる。
心臓はこれから起こることにドキドキと高鳴った。

初めてじゃないけど。
だけど、やっぱり慣れない。

ベッドに横たえられながらそんな事を考える。
恥かしくて、目は開けられなかった。
すると、チリッと痛みが首筋に走った。

「っ…。」
「何、考えてんだ?」

痛みに驚いて目を開けると、ゼフェルの顔が目の前にあった。
首筋の衣服はもうすでにはだけている。

不意に、さっきの不安がよぎった。

なんでもない、と言うのさえもどかしくて、もう一度俺からキスを仕掛ける。
舌を絡ませて、上顎をなぞって。
だけどやっぱり主導権はゼフェルに奪い返された。

俺のとは比べ物にならないほどの深いキスをゼフェルはくれる。
俺はそのキスに翻弄されて。
キスが終わるそのときも、まるでねだるようにゼフェルの舌を追った。

「マジで積極的だな?」

俺にしか見せない優しい笑みでそう言って、ゼフェルは首筋にキスをした。
さっきとは違う場所に刻印を刻む。
感覚でそれがわかって、嬉しくて体が震えた。

痛みを与えられた場所をゼフェルの舌がつっとなぞる。
優しく。

そのまま舌は下っていき、そして胸元でとまった。

ペロリとゼフェルが飾りを舐める。

「っぁ・・・」

それだけで声が漏れて、恥ずかしくなって俺は目を閉じた。
だけど、それは失敗だったかもしれない。

見えない分、すべての感覚が研ぎ澄まされる。

ゼフェルの舌がたてるピチャピチャという音をいつも以上に大きく感じていた。

「ふ・・・ぁ・・・」

声が自然と漏れた。
ゼフェルは執拗にそこを舐めている。

体がゆっくり熱を持ってくるのが感じられた。
いつもよりゆっくりと、でも、確実に追い詰められていく。

「っあ・・・。」

突然に、俺自身にゼフェルが触れた。
服の上からなぞるそんなかすかな刺激にさえ、俺は声を漏らしてしまう。

胸から顔を上げないまま、ゼフェルは何度も俺自身を指先で辿る。
吐く息までも熱くなって、気を抜くと声が漏れた。

「あ・・・ぁ・・・っん」

刺激が急に強くなった。
もやもやとしていた快楽が一気に確かな形をとる。
直接、ゼフェルが俺自身に触れてきたのだとわかった。

「ぁ・・・っ・・・ん・・・。」

もう、声を抑えることが出来なかった。
ゼフェルの手が俺のモノを包み、追い上げていく。

「・・・ぁ・・・く・・・っ・・・。」

ゼフェルは俺の先端をぐいっと押し、胸元をきつく吸った。
それが合図だったかのように、俺は熱を吐き出した。

頭が真っ白になった。
視界もぼやけている。

「は・・・ぁ・・・は・・・ぁ・・・。」

肩で息をしていると、ようやくピントがあってくる。
ゼフェルが、自分の手についた俺の白濁を舐めているのが、見えた。

「っ・・・ゼフェルっ!」

名を呼ぶと、ゼフェルがこちらを見て笑った。
再び耳に唇を寄せ、囁く。

「よかったか?」

顔が真っ赤になるのを感じた。

クッと笑って、ゼフェルはまた俺の耳に舌を這わす。
同時に、ズボンと下着を奪われた。

違和感を感じた。
ゼフェルに対するものじゃない。
いや、完全にゼフェルが関係ないともいえないけれど。

何度目かのその違和感には覚えがあった。
ゼフェルが俺の中に指を入れたんだと、記憶が告げる。

違和感はすぐに消える。
ただ、押し広げられるように指が蠢いて、俺は身をよじる。
そして、後悔した。

「あ・・・っ・・・」

快感が背筋を伝って、俺は無意識に震えた。
ゼフェルが笑うのが見える。

「ここか?」

俺のことなんて知り尽くしているはずなのに、
ワザとそう確かめるように言いながら、ゼフェルがもう一度その場所に触れる。
おもちゃのようにビクリと俺の体ははねた。

キッと睨んだ俺の唇に、ゼフェルは触れるだけのキスをする。
それだけで、怒りが溶けていく。

俺がキスに夢中になっている間も、ゼフェルの指は俺の中で動いていた。

入れるのも急なら、抜くのも急だった。
ゼフェルは突然俺の中から指を引き抜くと、ゼフェル自身をそこにあてがった。

「いいか?」

俺はうなずくことさえ恥ずかしくて代わりにゼフェルにキスをした。
ゼフェルの楔が俺の体を満たしていく。

「・・・っ・・・・ぁ・・・は・・・ぁ」

不自然な呼吸を繰り返しながら、俺はゼフェルを見た。
ゼフェルは不安そうにこちらを見て、いたわるように、額へ、頬へ、そして唇へキスをくれる。
俺は大丈夫だよと言う代わりにキスを返す。

「ぁ・・・ん・・・は・・・ぁ・・・ふ・・・っ」

ゼフェルがゆっくり動き出して、俺の唇から途切れなく声が漏れる。
自分で聞いてても恥ずかしくなるような高い声。
意味も無いその声を抑えようとして指をかむと、やめろというようにゼフェルが指を舐めた。

ゼフェルの熱と俺の熱が溶け合う。
ゼフェルが俺自身を刺激し、俺は、さらに何も考えられなくなる。

「あ・・・ぁ・・・ゼ・・・フェ・・・ル・・・。」

呼吸するのも自然に出来ず、読んだ名前は切れ切れになった。
それでも、ゼフェルは答えるように微笑んでくれて。

俺は、体を大きく震わせて2度目の絶頂へと辿り付いた。
同時に、ゼフェルの熱が俺を満たすのを感じる。

ゆっくりかすみゆく意識の中、ゼフェルの腕が俺を包んだ。
額に唇が当てられる。

意識が途切れる瞬間、俺の幸せはここにあると思った。






幸せになれないと人は言う。
だけど俺の幸せはココにしかないから。
ココが俺の幸せのアリカ。





ようやく続きを書けました。
はい、幸せのカタチの続きで幸せのアリカです。
なんだろう…。もう、好きにしてくれって感じです。
そして、長い…。
アホですか?はい、アホです。と言うほどに長い。(謎)
やっぱりエロは苦手です…。


(2004.5.16)