朝霧の聖地
−後編−



家路の半ばで、雨がポツリと降り出した。

「ジュリアス様、雨宿りをしましょう。」

確かに雲は厚く、雨は激しさを増しそうだった。

「あぁ。」

ジュリアスが、頷きながら答える。

すると、オスカーの栗毛の馬が横へと並び、ジュリアスを追い抜いた。

先導するつもりだという事がわかった。

ジュリアスが、オスカーの後を追う。

森を抜けて、着いたのはオスカーの炎の館。

オスカーがさっと馬から下りて、迎えたサーバントへと馬の手綱を渡す。

それを見やり、ジュリアスは倣うようにして馬から降りた。

(・・・!)

瞬間、体が傾いたのがわかった。

雨で濡れた大地に足元を掬われる。

けれど、寸での所で、ジュリアスは体勢を立て直した。

失われていた平衡感覚が戻ってくる。

(痛っ?)

不意に、足首にピリっと痛みが走った。

おそらく、足を捻ったのだろう。

我ながら間抜な事をした、と冷静に考え、自嘲する。

「ジュリアス様!」

おそらく、痛みが顔に出たのだろう。

オスカーが心配そうに声をかけ、近づいてきた。

「大丈夫だ。大事ない。」

そう、微笑んでオスカーに言う。

気付いてしまった痛みは消えないけれど、それでも、オスカーに心配をかけたくはなかった。

けれど、その言葉を聞いても、オスカーの顔は厳しかった。

(オスカー?)

何かを怒っているのだろうか?

そんな事を考えていたジュリアスの体が、刹那、宙へと浮いた。

オスカーが自分を抱き上げたのだと気付くのに一瞬かかる。

「オスカー!」

今の自分の状態をようやく理解して、ジュリアスが紅くなる。

けれど、オスカーはその声に耳を貸さなかった。

「後を頼む。」

ジュリアスの抵抗を難なく押さえつける。

サーバント達に後の事を任せてオスカーは館へと入っていった。






穏やかな時を、いつまでもあなたと過ごしたい。
少しずつ、変わる私を見て欲しい。
少しずつ、変わるあなたを見ていたい。
あなたが同じ気持ちなら、それはきっと、もう永遠。


・・・ということで、後編を付けてみました。
実はこれ、Underへと続きます。
お気が向いた時にどうぞ〜。
前編があまりにもラブっぽくなく不服そうなので、じゃあ、というころで作りました。(笑)
どうしてもそっちへ持っていこうとする私v(爆)
返品不可です。(おい)



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