ゲーム
オスカーはそっとランディを抱き寄せた。
「好きだ。」
耳元で囁く。
何度も繰り返された言葉。
いつも冗談めいていたその言葉。
けれど今、オスカーの声は真剣で。
だから、ランディの心は揺れた。
(信じちゃダメだ・・・!)
流されそうになる心を叱咤する。
目を瞑り、一つ深呼吸してからランディは、オスカーの胸を押した。
「離してください。」
静かな声音。
精一杯の虚勢だった。
そうしなければ、想いが溢れそうだった。
けれど、オスカーの腕は解かれない。
「どうすれば信じる?」
切なげな声。
今にも信じてしまいそうな自分が居た。
それでも信じられないのは、オスカーがあまりにもモテるからだ。
ついさっきも、美しい女性に口説かれていたっけ・・・。
ぼんやりとそんな事を考える。
(なのに・・・何故俺を大事そうに抱きしめる?)
都合のよいことを考えそうになってランディは軽く首を振った。
信じたら最後だ。
おそらくコレはオスカーのゲームで。
自分は男で、マルセルのように可愛くもなくて。
だから、ゲームという理由以外オスカーが自分を口説く訳は考えられない。
信じてはならない。
信じればその時点で『負け』だ。
自分が、惨めになるだけ・・・。
ならば、信じなければいい・・・。
「離してください。」
もう一度、ランディは言った。
これ以上その腕に抱かれれば、『負け』てしまう・・・。
解かれる抱擁。
離れていく腕を残念に思う自分がいて、ランディは自嘲気味に苦笑した。
離れた瞬間、オスカーの瞳が揺れているのに気付いた。
(あぁ、こんな風に揺れる事もあるんだ・・・。)
いつも強い意志を宿すその双眸が・・・不安げに揺れる。
そのまま、ランディはくるりと背中を向けた。
「少しなら・・・信じてもいいです。」
ポツリと呟くように言った言葉。
不安げなその瞳に魅入られた時点で、ランディの負けだった。
すでに、全てを信じそうになっているのを誤魔化して言う。
囁きのように小さいその言葉は、けれどオスカーには伝わったらしかった。
後ろから腕が伸びてきて抱きしめられる。
「オスカー様!」
「愛してる、ランディ・・・。」
耳元で囁かれて、紅くなったランディが振り向くと、もう、いつものオスカーで。
ランディが振り向いた瞬間に、唇を重ねてきた。
「いつか完璧に信じさせてみせるさ。」
更に紅くなったランディにオスカーガ言う。
少しでも可能性があるなら諦めはしない。
今はまだそれでいい、と呟いたオスカーは自信たっぷりで。
悔しいから、もう全部信じてしまっているのは秘密にしようとランディは思った。
『大好き』だから臆病になって
『大好き』だから、貴方の言葉も疑ってしまう。
それでも信じてしまうのは・・・。
やっぱり『大好き』だから・・・。
あおい様のリクエスト品です。
オスカー×ランディで、オスカーの告白・・・とのことでした。
・・・ということで、疑心暗鬼なランディ様を趣味で書いてみたり。
オスカーはきっと、いつも軽いノリで冗談めいてランディ様を口説いてそうです。
・・・で、肝心な時に信じてもらえないという・・・。
最後になりましたが、この作品はあおい様に捧げさせて頂きます。
貰っていただけると幸いです。
素敵なリクエストをありがとうございました♪
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