特別な日



その日は、日が暮れるのが待ち遠しかった。

それは日が暮れれば、ランディは恋人に会えるからだ。
もっとも、日が暮れてから会えないのはいつも同じなのだが・・・。
今日は特別だった。

(誕生日、だから。)

覚えてくれている、とは思わなかった。
そういう事に、ゼフェルは無頓着だから。
それでも、誕生日に好きな人の傍に居れる、という事が嬉しかった。
誕生日を愛する人と過ごせるということが幸せだった。

「おい、ランディ。」

そんな風に、日が暮れてゼフェルに会えることばかりを考えていたから。
最初、ランディはその声が幻聴だと思った。

「おいって。」
「・・・え?」

もう一度呼ばれて、ようやくランディはその声が幻聴でないと気付いた。
けれどゼフェルの姿は見えない。
扉の向こうかな?などと思いながらランディは扉へと近付いていく。

「そっちじゃねぇって。」

声は扉とは正反対の方向から聞こえてきた。
その方向にあるのは・・・窓。
まさか、と思いながら窓へと近付いていく。

「よぉ。」
「・・・ゼフェル!?」

そこには、ゼフェルが、居た。

「・・・ッ!?何してるんだよ、ゼフェル。」
「何って・・・分かんねぇのか?」
「・・・?」

首を傾げたランディに、軽くゼフェルが溜息を吐く。
それから窓枠に手をかけた。

「まぁ、いいか。せっかく来たんだし、中入れてくれよ?」
「・・・ってゼフェル、仕事は!?」
「サボった。」

驚いている間に、ヒョイっとゼフェルが中に入ってくる。
驚きのせいで、ランディにはゼフェルの言葉を理解するまで少しかかった。

「・・・サボったって・・・ゼフェル!!」

ようやく理解して怒鳴るが、ゼフェルは飄々とした様子で肩をすくめるだけだった。
その様子にますます腹が立つ。
その勢いでさらに怒ろうとしたランディをゼフェルが止めた。

「・・・ゼ」
「それより、お前の仕事は?」
「・・・一応、一段落着いたけど・・・。」

ピッタリのタイミングで遮られて、ランディの毒気は思わず抜かれてしまった。
そのまま素直に答えたランディにニッとゼフェルが笑う。

「さすが、優秀な風の守護聖サマ。」
「・・・ッ!」

嫌味か、と怒ろうとしたランディの毒気は、その手をゼフェルにとられたことで再び抜かれた。

「じゃあ、一緒にサボろうぜ?」
「・・・何で俺が付き合わないといけないんだよ!?」
「・・・誕生日。」
「え?」

ポツリと小さく呟かれた言葉は、聞き取りにくくて、思わずランディは聞き返した。
そんなランディにまた溜息を吐いて、ゼフェルがそっぽを向く。

「誕生日、だろ?」
「・・・覚えてて、くれたのか?」
「・・・。」

微かに見える耳が真っ赤に染まっているのが見えた。
それから、一つの事に気付いた。

「・・・じゃあ、会いに来てくれたのか?」
「・・・ッたまたまだ、たまたま!」
「・・・ありがとう。」

執務をサボったことは、もちろん褒められた事じゃなかった。
いつもなら、自分はその事を怒る。
けれど・・・。

(今日は。)

今日は、特別な日だから。
自己中だと言われても、全て流してしまおうと思った。

「どこ行こうか、ゼフェル。」

今度は自分からゼフェルの手を取って。
グイっと窓へと連れて行く。

「いいのかよ?」
「一日くらい、いいだろ。」

笑いながら言われたそのランディの答えにクッと満足げにゼフェルも笑って。
二人は窓から外へ出た。

その日、二人で過ごす恋人達の姿があちこちで見られたという・・・。










その日を一瞬でも一緒に過ごせたら幸せ
その日を一日中君と居れたからもっと幸せ



ぎりぎり間に合いました。
ハッピバースデーランディ様☆
にしても、なんど名前を打ち間違えたか。(爆)
・・・表に同じタイトルがあった気がしますが、その辺はお気になさらず・・・。(ぇ)



(2006.3.28)