とある水の曜日。 私の執務室に、オスカーが訪ねてきた。 「土の曜日にどこかへ出かけないか?」 急な事にいぶかしむ。 私とオスカーは仲が良いとはいえない。 それどころか、悪いほどなのだ。 なのに・・・。 けれど、どんな理由にせよ誘われたのは嬉しかった・・・。 「悪い、明日はダメになった。」 中止が告げられたのは、前日の金の曜日だった。 言ったオスカーのその表情は本当に申し訳なさそうなもので・・・。 「ジュリアス様に仕事を頼まれた。」 それでは断れまいと思う。 オスカーがジュリアス様を大切に思っているのは知っていたから。 「別にかまいません。」 淡々と答えたその声は、私自身でさえ冷たいと感じた。 共に出かけられない事が悲しかった。 けれど、それを悟られるわけにはいかない。 この思いを知られる訳には・・・。 ジュリアス様を優先させた事に対する、少しの憤りもあった。 当たり前のことなのに・・・。 八つ当たりをしてしまった自分が嫌で、私は、土の曜日を鬱々と館で過ごした。 そして・・・見てしまった。 オスカーが美しい女性と歩いているのを・・・。 「もうそれぐらいにしなよ、リュミちゃん?」 横からオリヴィエが心配そうに言ってくる。 本当に心配してくれているのは、その声音から嫌というほど伝わってきた。 けれども、それでも飲まずにいられなかった。 私はオリヴィエの言葉に軽く首を振り、新しい酒を頼んだ。 自分の事ながら、子供のようだと思う。 嘘をついたオスカーに苛立って、オスカーと共に居た女性に嫉妬して、 オリヴィエにまで迷惑を掛けて・・・。 それでも、今は全てを忘れたかった。 ウェイターが目の前に置いた酒に手を出す。 酒が全てを忘れさせてくれるように・・・と。 「原因はオスカー?」 苦笑しながらオリヴィエは言った。 出されたその名に、私はビクリとした。 「違いますよ。」 一瞬の間の後、辛うじてそう言った。 けれど、声は震えていたし、間もあったので、嘘だとバレバレだろう・・・。 オリヴィエがもう一度苦笑するのがわかる。 きっと呆れている。 それでも、彼が席を立つ気配はない。 そのことに少し安心しながら、私は更に酒を重ねていった。 やがて、思考が止まり・・・。 私は夢の狭間へと落ちていった・・・。 |